コラム

中国内蒙古自治区赤峰市は、カシミヤの産地として有名ですが、
その中でもベビーカシミヤやハンシャンカシミヤ(罕山山羊)と呼ばれている
カシミヤの生産を行っている地域です。今回、平成28年5月30日〜6月3日に渡り、
この地のカシミヤの生産状況について調査を行って参りました。









                                                                      



この調査では、私たちが知らなかったような情報も入手でき
非常に有意義なものとなりました。

また、今年のカシミヤの原毛等のサンプルも入手でき、
毎年のように変化するカシミヤ毛の形態研究が大きく
前進するものと期待できます。

ケケンでは、これらの調査結果を、今後の試験精度の
向上に生かしてまいりたいと考えております。
 

問い合わせ先           
0586−45−2631         
獣毛総合研究所 所長 丸茂 征也

 アンゴララビットの生産現場の調査のために、2015年4月23日から25日にかけて、アンゴラの飼育場や整毛(*1)工場を視察しました。
 今回訪問したのは、中国山東省臨沂市近くの蒙陰県に位置するアンゴラ飼育場です。臨沂市までは北京から飛行機1時間弱の距離です。そこからさらに1時間半ほど車で移動した場所にアンゴラの飼育場がありました。この場所は少し高台にあり、周りは山と畑といった田舎の風景でした。また、気温も熱くもなく寒くもない状態で、半そでの上着でちょうど良い感じでした。

(*1)整毛 … 産毛とヘヤーが混在している原毛から産毛を取り出したもの。この作業を行う工程を整毛工程という。




〜〜 飼育場 〜〜


 アンゴラは、1匹ずつケージに入れられ飼育されており、その数が1列あたり100箱余りでこれが5、6列並んでいました。アンゴラ以外にも、チンチラ、レッキスなどの種が数匹飼育されていましたが、これらの種は、主にアンゴラの赤ちゃんに与える乳を供給するために飼育しているとのことでした。




コンクリートで囲まれた4〜5畳程度の部屋で採毛を実施していました。この飼育場のアンゴラについては年5〜6回採毛するとのことです。アンゴラを抱えた職人が巧みに専用のバリカン、毛バサミを駆使しあっという間に1匹の採毛が完了してしまいました。1頭当たり500gほど採毛できるとのことでした。
 また、担当者によると、ここの飼育場をはじめとして、基本的にアンゴラの採毛はこの刈る方法で行うとのことで、私の方から、「抜く方法で採毛はしないのですか?」と質問したところ、
「抜く方法で採毛を行うと長い毛が取れるということが言われているが、 
 ・きれいな毛が取れない。
 ・個体が傷ついてこれ以後良い毛が取れなくなる。
 ・皮に対しても傷ついてよくない。(商品価値が下がる)
 ・抜かれて痛めたところから感染症になることがあり、他のアンゴラ個体に容易に伝染し
全滅する可能性がある。
 ・当局から動物福祉に対する認定を受けており、禁止されている。
 ・取引先と刈毛でないと取引できないという契約を結んでいる。
などのデメリットや理由によりがあり、これらについては致命的な問題にもなりかねないので、一切抜き取る方法は実施していない」ということでした。



●アンゴラ採毛映像



採毛の見事な手さばきを見れば、日常この手法がとられているのは明らかで、前記のことを裏付けるのに十分であると感じました。
 この地域では、20年前から貧困から抜け出すために地域でアンゴラ飼育を始め産業としているそうです。したがって、アンゴラのおかげで生活が成り立っているという意識があるため、アンゴラに感謝し大切に扱っているそうです。ただ、国外のアンゴラの需要が減ってきているため、中国国内の内需にシフトしつつあるとのことでした。最後に、アンゴラを抱きかかえて見せてもらいました。やはり毛が長いので一見大きく見えました。



〜〜 整毛工場 〜〜

見学したこの工場では、一日に400kgのアンゴラ整毛を生産し出荷しているとのことです。工場の入り口にあるアンゴラの原毛倉庫では原毛が山積みにされており、汚れる箇所や、不純物を手作業で分別します。アンゴラはカシミヤや羊毛と違い原毛での洗いは行わないので、この工程が非常に重要であるとのことです。原毛を見ると、束になって一直線に切られた跡が残っており、刈毛であることは明白でした。



整毛工程ですが、湿度管理された部屋に整毛機が並んでおり、次々と整毛が出来上がっていました。ここの工場では、この整毛工程を10回繰り返すとのことです。出来上がった整毛わたは、平均繊維直径が14ミクロン、繊維長が30〜32mmで太い毛(刺毛)の含有割合が、1000本当たり1本以下とのことです。実際に整毛されたわたを見ると細い毛(産毛)が非常に白く、柔らかく繊細で、申し出のスペックは十分あるとの印象を受けました。持ち帰って、平均繊維直径を測定すると14ミクロン台であり、聞いていた通りでした。




〜〜 アンゴララビットについて 〜〜

 

アンゴラ兎毛は、軽く、温かく、それに加え、毛のスケール(鱗)が平滑性に富んでいるため光沢及びソフト感がある純白な毛素材です。以前より婦人用衣料用等の高級素材として人気があり需要があります。アンゴララビット(以後、アンゴラ)は、日本でも過去に飼育されていた時代があり、1960年代では年間約300tの生産量がありましたが、1970年代にはほとんど飼育されなくなりました。現在の産地は、世界の生産量の9割を占める中国、そのほかは、フランス、チェコなどのヨーロッパや、ごく少量ですが南米のチリでも飼育されているようです。(年間生産量はおよそ4700トン)
 アンゴラは、通常、放牧ではなくケージの中で飼育します。また、その毛は、12〜14ミクロンの細い毛(産毛)と30〜100ミクロンの太い毛(刺毛)で構成されており、3か月で5〜9cm、1年で12〜15cm伸びるといわれています。通常年4回抜け替わる時期があり、採毛はバリカンもしくは毛バサミで刈り取る方法により行います。


 今後引き続き、別の地域での調査も実施し、多角的な情報収集を行い、それらの情報を素早く発信できるよう努めていきます。



この報告に対するお問い合わせ先
〒494−0002
愛知県一宮市篭屋4−14−4
一般財団法人ケケン試験認証センター 獣毛総合研究所 所長 丸茂 征也
電話 0586-45-2631   Eメール marumo@jwif.org

カシミヤ100%製品などでその品質情報として最も重要と言えるのが混用率です。ケケンでは、それらカシミヤ製品を安心して購入していただくためにカシミヤ100%タグ制度を実施しております。この制度の中でも混用率に対する考え方の比重が大きく、その精度維持向上が常に課題となっており取り組んでいます。
 現在、ケケンで実施しているカシミヤなどの獣毛混用率はJIS L 1030-2による顕微鏡です。これは、試験担当者が顕微鏡で製品に使用の毛の種を鑑別することにより混用率を算出する方法です。この方法の精度については、試験担当者がどれだけ幅広く産地ごとのカシミヤの形状、繊度(繊維直径)、繊維長などの特徴を把握しているかが非常に重要だと言えます。
 ケケンでは、これらの課題に対応すべく獣毛混用率の業務開始時より、原料を扱う商社、紡績メーカーなどを通じて様々な原毛を入手しデータベース化しておりましたが、データベースに対するトレーサビリティをより確実にするために、2006年よりケケン自らが各産地に赴き動物から採毛を実施しています。このことにより、産地の環境、飼育形態、飼料の情報とカシミヤの毛質などの特徴を関連付けてデータベース化することが可能となり、実際にケケンの担当者が採毛するので、試料に対するトレーサビリティも確保され、ケケンのカシミヤ鑑別の精度維持向上に大きく寄与しております。
 これまでの原毛採取及び生産地調査については、中国各地を始め、モンゴル国、キルギス国などカシミヤ、ヤクなどの獣毛の主要な生産地に足を運び調査を行ってまいりました。 


ケケンカシミヤサンプリング調査(2006〜2014年)


今年のサンプリングは、特殊な地区でのカシミヤの産地調査をテーマとしており、今回チベットのナムツォ地区へ2014年6月29日〜7月3日に渡り現地のカシミヤの産地調査及び原毛の採取を行うこととしました。
 今回調査を行ったチベットのナムツォ地区は海抜4700mであり、空気が薄く高地適応のために1日以上ホテルで待機する必要があります。長く感じる待機期間を終え、牧場に到着しました。この地区の牧場の飼育形態は、内蒙古などでは砂漠化の影響に配慮し柵などで囲われた中での飼育が多いのに対し、完全放牧の形を取っていました。夜は杭と布で作成した簡易的な囲いの中で過ごすとのことです。気候については初夏に入ろうとしている時期でありながらかなり肌寒く、高地ということもあり良質のカシミヤの毛を産出する気候であるとの印象を受けました。



チベットナムツォ地区の放牧の様子


案内していただいた原毛会社の担当の方の話によると、ここで飼育されているのはカシミヤとヤクがメインでその数は、一つの牧場でカシミヤ70〜100頭、ヤク70頭前後だそうです。また、この地区で取れるカシミヤは、ホワイト、ブラウン、エクリュの色があり繊維直径が14μm台で比較的細く、繊維長は36〜38mmだそうです。ヤクについてはほとんどが有色(ダークブラウン)のものであり、一部ホワイトのものがありますが観光用として非常に重宝されるため放牧ではなく囲って飼育しているそうです。
 この地区での採毛は、今年は気温が低く遅れておりまだ始まっていないそうです。通常中国主要産地では早い時期では3月ごろから始まり6月末ごろには終わります。今回、サンプリングの主旨を説明し、特別に採毛していただきました。カシミヤは一般的な産地同様、最初にはさみで外側を覆っている太いヘヤー切り取り、その後内部の産毛を専用の櫛形採毛器で採毛します。



カシミヤの採毛の様子

一方、ヤクも同様に採毛をしていただきました。ヤクはカシミヤと違い、時期が来ると自然と産毛が抜け落ちますのでキャメルの採毛と同様、直接手で抜き取ります。


ヤクの採毛の様子

サンプリングしたカシミヤの毛を見ますと、比較的きれいでやはり説明にあったように細い印象を受けました。この原毛について顕微鏡による形状観察や繊度測定などの分析を早速始めたいと考えています。担当の方の話によると、この地区には紡績工場がないため採毛された原毛は、内蒙古などの主要生産地に運ばれるとのことです。
ケケンでは、このように毎年獣毛に対する調査を行っております。今後については、他の獣毛の産地や過去にサンプリングした地区で再度サンプリングを行いその地区での原毛の変化などを調査したいと考えております。これらの活動を継続して行うことにより、試験の精度を高め、獣毛に対する最新の情報を素早く提供できるように努めたいと考えております。


この報告に対するお問い合わせ先
〒494−0002
愛知県一宮市篭屋4−14−4
一般財団法人ケケン試験認証センター 獣毛総合研究所 所長 丸茂 征也
電話 0586-45-2631   Eメール marumo@jwif.org









 繊維製品にカシミヤ、羊毛等の獣毛が使用されていた場合、その混用率を算出する試験方法としては、一般的には、日本工業規格であるJIS L 1030-2繊維製品の混用率試験方法に規定されている顕微鏡法と呼ばれる方法によって行う必要があります。
この方法は、光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡を用いて、毛の外観観察を行いその特徴の違いから毛種を判別するものです。

これまで当研究所でも衣料素材としての獣毛の鑑別について、その鑑別技術の維持及び向上に努めて参りました。
しかしながら、最近では衣料素材用途以外の獣毛、例えば毛皮、ブラシ、食品等に混入される異物などについての試験鑑定依頼が増えており、当研究所においてもそれらの要望に応えるため、さまざまな獣毛のサンプルを収集し、データベース化しております。

 2013年7月、ある展示会においてケマンモス(Mammuthus primigeniusu)の体毛標本を入手しました。
毛種が近いとされているゾウ(アジアゾウ Elephas maximus)を始め、多種の獣毛の形態について、走査電子顕微鏡を用いて外観を比較検証しました。

詳細につきましてはリンク先の資料よりご参照ください。
(PDF形式、4MB)

前回の話では、平成199月、ケケン内に「カシミヤ表示適正化のための外部有識者による検討委員会」を設け、4つの基本方針が示されたことを申しましたが、それらを私たちの制度の中でどのように取り込んできたか、できるだけ簡潔に説明いたします。

  新しい制度の実現のために私たちが最も努めていたのは、正確な表示のサポートとなること、利用される方々のコスト負担が過度でないこと、そして生産、流通、消費を通じて信頼を得られること、でした。

 このうち、制度とコストは二律背反的関係にあり、正確を期せば期するほどコストが高くなります。

 

 当時、私たちの勉強会の中で議論したことをここに紹介します。

 「製品を認証する」ことの概念は非常に広く捉えられるが、概論として、次のような範囲になる。

?全数試験

 全ての製品について、必要な試験を行う制度。

 製品の安全性など、その必要性が高いものが対象になっているが、カシミヤ製品はそうした範疇には入っておらず、破壊試験が必要な製品を対象にするのは現実的ではない。

?抜き取り試験

 一定のルールの下に抜き取り試験を行うもので、破壊試験を前提とすれば、抜き取り率が高いほどコストが高くなる。

 抜き取りの対象となった製品ロットが認証の対象になる。

?工場審査

 品質管理者と生産工場の審査を行った上で、合格した工場の一定期間の一定製品を認証の対象とする。

 審査機関の審査能力が最大の課題である。

  工場審査については当時のケケンとしてはその実力に達しておらず、次のチャンスを待つことにした。

 以上のうち、ケケンの結論としては、?を選択しました。

 上記の類型化と合わせて、「第三者による抜き取り」を確実に実現することが不可欠でした。これは、クローズドにした環境の中で、生産流通の流れの外にある組織がサンプルを抜き取ることを意味します。

 広大な生産国、生産地の中で、ケケン単独では実行が不可能に近いことでしたが、幸い、検品業者さんの協力を得ることができました。タグのご依頼者様には、タグの取付け希望の製品全数を、検品工場に持ち込んでいただいて、ケケンが一定ルールの下でお願いした方々に、第三者抜き取りとして、製品の抜取りを依頼することができました。